郵便配達人 ジョゼフ・ルーラン

f0104004_86871.jpg感じのいい郵便配達人から郵便物をもらうと、素直に感謝の言葉が出てくる。
最近は手紙より電子メールで用事をすませることも多い。しかし手紙には、電子メールで表せない温かみがある。それを運んでくれるのが郵便配達人だ。
ゴッホ(1853―90)の時代には電話もなく、郵便が今よりはるかに人との交流を図っていた。
ゴッホといえば、弟のテオと18年間も頻繁に手紙の交換をし、彼の生命線でもあった。
彼の手紙を読んでいくと、ゴッホの人間性にたどり着く。「狂気」という言葉で、彼を理解してしまうことが、大きな誤りだということに気づかされるのだ。
そんな手紙好きのゴッホに、奇遇にも郵便配達人の良き友人が現れた。アルルのカフェで出会ったジョゼフ・ルーランである。
ゴッホの描いたルーランの肖像「郵便配達人」を観てみたい。
椅子からあふれ出しそうな大きな体と仕事人の丈夫な手。立派な顎鬚は「緑」「黄」「黒」「茶」「赤」「白」などの多色で表すことによって、存在感を持たせている。そして少し驚いた表情にも見えるが、誠実で世話好きな彼の人柄がとてもよく表されているのだ。
ゴッホは、純粋で必要以上のやさしさがある半面、思い込みが激しく、気が短く、画家以外の友人はほとんどいなかった。
しかしルーランは、そんなゴッホを受け入れ、お互いの話も合ったのだろう。さらに彼の家族とも親しくなり、彼の妻や子どもたちもモデルとなってくれた。
ゴッホの短い生涯の中で、家族ぐるみで彼を理解してくれたのは、おそらくルーラン一家だけだろう。彼にとっては無くてはならない人たちだったのだ。                   
そんな良き理解者を得たゴッホであったが、1888年末、ゴーギャンとの仲たがいから、自分の耳を切り落とすという悲劇が起こる。
そのため精神病院に入院するが、ルーランは病院に見舞い、退院にも付き添うなど、いつもゴッホのことを気遣っていたのである。正気ではない行為をしてしまった他人を、避けるどころか、支えたのだ。
そのような信頼からか、ゴッホはルーランの肖像画を6枚も描いている。それもすべて制服を着た姿だ。
彼が病院から自分の家に戻り、再び制作を始めた時に描かれたルーランの肖像を観てみよう。
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このころ彼には、アルルからマルセイユへの転勤の命令が出されていた。
何だか、顔に憂いを感じ、今にも涙が出そうだ。彼はゴッホを置いてアルルを去ることが気がかりであったのだろう。それ以上にゴッホは不安で寂しくてしかたがなかったに違いない。お互いの切なさを表した絵に私は観えてしまうのだ。
背景には花々が描かれ、ルーランへの今までの感謝の気持ちを表したように、私には思えてならないのである。

☆ファン・ゴッホ 「郵便配達人」 1888年 油彩 ボストン美術館
☆ファン・ゴッホ 「ジョゼフ・ルーランの肖像」 1889年 油彩 
                          ニューヨーク近代美術館
☆ファン・ゴッホ 「ジョゼフ・ルーランの肖像」 1889年 油彩 
                         バーンズ・コレクション
☆ファン・ゴッホ 「ジョゼフ・ルーランの肖像」 1889年 油彩 
                         クレラー・ミュラー美術館

*ニューヨーク近代美術館で、本物を鑑賞しました。ブログに載せた画像とは全然違います。絵を観るなり、「生きている!」って思ってしまったほどです!
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by van__gogh | 2007-01-03 08:06 | ファン・ゴッホ | Trackback | Comments(0)
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