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ブリヂストン美術館 「カイユボット展 - 都市の印象派」

とても心に残る展覧会だった。それほど感動の連続だった。ブリヂストン美術館で開催されていた「カイユボット展-都市の印象派」だ。

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カイユボットの作品を初めて鑑賞したのは、シカゴ美術館の『パリ、雨の日』だった。
美術館の入口を入ったところに、門外不出と言われている、スーラーの『グランド・ジェット島の日曜日』の横に展示されている。もちろんスーラーの大作もすばらしかったが、それ以上に、カイユボットの『パリ、雨の日』に魅せられてしまった。
石畳の上に落ちる雨の描き方、傘を持つ人々の都会的な姿・・・、何だか印象派という感じがしなかったことを覚えている。

印象派といえども、彼の作品を鑑賞することは、そう簡単ではない。
というのも、彼はブルジュア階級で、生活のために絵を描く必要もなく、むしろ、モネやルノアールの生計を支えるなど、サポート側の立場が目立っていたからだ。
だから彼の死後、彼の作品は家族が相続し、現在でも個人蔵が非常に多い。
数年前、ブリヂストン美術館が、カイユボットの作品を購入したことから、彼の回顧展を開催するに至ったようだが、これだけの個人蔵を集めたことには、画期的なことである。

カイユボットは室内画を多く描く画家として知られており、ドガの影響も受けているというから、ドガ好きの私にとって、この展覧会を期待していた。そして、想像通り、想像以上の内容と構成だった。

特に、入口の2つの部屋は、彼の室内画が展示されており、何回、この部屋を行き来したかわからないほど、魅了されてしまったのだ。

では、感動した作品を思い出してみたい。

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『昼食』
この作品を見て、私はますますカイユボット好きになってしまった。高級なガラスの輝きを細やかに、丁寧に描き、特に、窓から差し込む光に反射する描き方に、カイユボットの力量を感じてしまう。
また壁やカーテンなどの細かな部分の色使いや質感も見事だ。
そして、母と息子の食事のシーンであるが、何となくお互いの距離というものを感じてしまう。「昼食」というと、明るく楽しいイメージを想像してしまいがちだが、「個」を感じてしまう静かな「昼食」だ。

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『マルシャル・カイユボット夫人の肖像』
『食事』の隣に、カイユボットの母の肖像があったのだが、『食事』の母も何となく明るいイメージがなかったのだが、こちらの肖像も何だか気難しさを感じる母の姿である。


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『室内-読む女性』
手前の女性が必要以上に大きいのか、ソファーに座った男性が必要以上に小さいのか、まず考えてしまう。
ソファーやクッションの大きさからみると、男性を意図的に小さく描いたように思える。まさしく、タイトル通り、主役は「読む女性」である。女性の健康的で木目細やかな肌、さらに鼻の描き方が、特にすばらしい。

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『室内-窓辺の女性』
「フランスは個人主義の国」と言う言葉を時々耳にするが、この窓際に立つ女性と椅子に座る男性との間にも、それぞれの「個」を感じてしまう。近くにいるのに、何となく「距離」があることを巧みに描いた作品だ。


カイユボットはドガと同じく、室内画に多く取り組んだが、今回の展覧会を鑑賞して、ドガが「鍵穴を除きこんだような」、「シャッターの一瞬をとらえたような」と表現されるほどの鋭さはなく、身近な人や物の「存在」というものを大切にした作品を描いたように感じる。
そして、家具や壁、小物に至るまで、人物と同様に、愛情を持って描き、その質感は見事だ。

画像はないが、3作の自画像も印象的だった。特に、同じ年に描かれた2つの自画像は、個人蔵とオルセー美術館所蔵で、画家としての野心や生命力を感じる絵は、個人蔵の作品だった。

私にとって、カイユボットの人としてのイメージはルノアールの『舟遊びの昼食』に出てくるヒョウキンな姿だった(手前の麦わら帽子をかぶって、椅子を反対にして笑顔で座っている人物)。
だから、今回の深みのある自画像2枚を見て、カイユボットの新たなイメージを持ってしまった。
そして、ファン・ゴッホ、ドガに続いて、もっともっと知りたい画家になってしまったのである。

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この展覧会を振り返ると、感動した作品はすべて個人蔵であった。そして、展覧会じたい、個人蔵の作品が非常に多い。
画家としてのカイユボットは、評価が高まっているため、今後、展覧会で見る機会は増えるかもしれない。しかし、ここまで個人蔵を集めることはかなりのエネルギーや資金が必要だ。
本当にいい展覧会だった。このようなすばらしい展覧会を企画、実現してくださったブリヂストン美術館に心から、拍手をおくりたい。
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by van__gogh | 2013-12-31 19:54 | ヨーロッパの画家 | Trackback | Comments(0)