ファン・ゴッホ 『じゃがいもを食べる人々』

f0104004_1885335.jpg
私はファン・ゴッホの絵がたまらなく好きだ。
日常何気ない時に観ることも好きだが、苦しい時や悲しい時に観ると、とても心が落ち着く。
ファン・ゴッホというと、アルル時代の「ひまわり」のような華やかでキラキラした色彩の絵や、後期の「糸杉」や「星月夜」のような荒々しく、一段と独特のゆがんだ物の見方をした絵が、特に有名である。
私は、これらの絵ももちろん大好きだ。特に自分の力が湧かない時に強い筆使いを見ると、力をもらったように感じる。そのおかげで何度がんばれたか、数え切れない。
そうした中で、一番好きな作品は、初期に描かれた『じゃがいもを食べる人々』を迷わず選ぶ。
ファン・ゴッホは、短気で思い込みの激しいところがあった半面、かわいそうなくらい純粋でやさしく、正義感が強すぎて傷つきやすく、ストレートに感情を表してしまう。
この絵もそんな彼の純粋さと社会派的なところが感じられる作品で、最大の特長は、主人公が貧しい農民であることだ。
この作品には5人の農民が描かれているが、少し人間離れし、やせすぎた顔をしている。また、少し不思議でもあり、おもしろいなと思うところは、この5人が視線を合わせておらず、会話が成り立っているのか成り立っていないのかもわからないこと。しかし、彼らの顔や手からは、厳しい労働に耐え、一生懸命に生きている人々の内面的な強さがうかがえる。
ファン・ゴッホはミレーの農民の絵に感銘したそうだが、ミレーの「晩鐘」や「落穂ひろい」のようにのどかで牧歌的な作品ではなく、もっと人間の生活を感じる。しかし、この時期のファン・ゴッホの農民をはじめ労働者の表情は、みじめさやあわれな雰囲気ではなく、威厳ともいえるくらい、強い信念をうかがえるところが、私は最も好きだ。
「顔の表情」からその人の性格や状況がわかるとよく言われるが、私は「顔」と同様に「手」も、その人の心の状態や生活感を表す重要な部分だと思う。「顔」でうまくごまかしても「手」が反応してしまうことがある。
「手の表情」は人間の心理を顔以上に表す場合があるので、私は絵画や映画を観る時、どうしても手の表情にも目がいってしまう。
ファン・ゴッホはこの手の表情を非常によくとらえた画家だと思う。特にこの「じゃがいもを食べる人々」にそれが表されている。
ファン・ゴッホはこの絵の手の部分に関して「彼らが土を掘るその手で食べているように、空気のように自然に描こうと努力した」と書いている。
家は小屋と言った方がふさわしく、食卓の上にランプの光がある以外は暗い色を用いている。ファン・ゴッホはこの色を「泥だらけの皮をはがないじゃがいものような色だ」と書いているが、なるほどと思った。暗い色彩。しかし、貧しさの中でも農民の表情から、秘めた強さを感じる。そこが、たまらなくいい。
この絵はオランダの「ファン・ゴッホ美術館」にある。この絵の色彩が本によって微妙に違う。
いつか、ファン・ゴッホの故郷のオランダで、実物の『じゃがいもを食べる人々』を鑑賞できることを夢見て!

☆『じゃがいもを食べる人々』 The Potato Eaters
1885年4月 ニューネン 油彩 ファン・ゴッホ美術館
[PR]
# by van__gogh | 2006-04-01 19:59 | ファン・ゴッホ | Trackback | Comments(0)